演習シナリオ

高齢の黒いラブラドールレトリーバー

ラスティの紹介

12 歳、去勢手術済みのオス、ラブラドールレトリーバー

  • ラスティは、半年に 1 回のシニア向け健康診断に加え、必要に応じて血液と尿の検査を受けるために来院しました。
  • 飼い主の報告によると、ラスティはおおむね健康ですが、以前ほど活発ではなっています。また、夜間の睡眠時間が短くなり、ときどき混乱しているように見えます。
  • ラスティは、市販のさまざまな「シニア用」フードを食べています。飼い主は、こうしたシニア用ドッグフードの間に違いはあるのか、この時期のラスティにより適したフードがあるかどうかを知りたいと思っています。

シニア犬

シニア犬の食餌

加齢は疾患ではありませんが、多くの場合健康問題を伴います。栄養は、健康と最適な体型の維持、加齢に伴う健康問題が起こる前の取り組み、過体重や肥満のリスク軽減に寄与し、犬が長く質の高い生活を送る可能性を高めるうえでも重要な役割を担っています。 

シニアのワイマラナー

キーメッセージ


  • 犬種や身体の大きさによって犬の加齢速度は異なりますが、ほとんどの犬はおよそ 7 歳で「シニア」と見なされます。 
    • 加齢は、最終的には遺伝によって決まりますが、栄養、活動、健康問題、環境によって影響を受けることがあります。
犬の身体の大きさ シニアと見なされる年齢
超小型犬  9 歳 
小型犬 8 歳 
中型犬  7 歳 
大型犬  6 歳 
超大型犬  5 歳 
出典: Nestlé Purina PetCare Communication Principles for Europe, Middle East & North Africa.(2015). p. 14. 
  • 高齢犬の加齢性変化は、外見的な徴候や行動として現れる前に体内で起こります。このような変化には次のようなものがあります。 
    • 脳の老化によるエネルギー源としてのグルコースの使用効率の低下は、認知の健康(記憶や学習能力)に影響する可能性があります。軽度の認知障害は、6 歳の犬でも報告されています。 
    • 代謝速度の遅延と活動レベルの低下はともに、エネルギー(カロリー)必要量の低下をきたし、フードの種類や量を調整しない限り、過体重になる可能性が高まります。過体重により、老化した関節へのストレスが増加し、変形性関節症のリスクが増大します。 
    • タンパク質の代謝効率の低下は、除脂肪体重(筋肉量)の減少につながる可能性があります。除脂肪体重の減少は、代謝速度の低下をきたし、過体重リスクを増大させる可能性があります。 
  • シニア用の食餌のメリットについて飼い主と話し合う時期は、犬が 7 歳になる頃が適切です。そうすることで、目的に合わせた栄養により、一部の加齢に伴う変化に事前に取り組むことができます。犬のシニア期向けの栄養素プロファイルは確立されていません。ただし、いくつかの栄養介入が有益であることが明らかになっています。 
    • Purina の研究により、高性能化された植物油に由来する食物中の中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が脳細胞の代替エネルギー源となり、老化する犬の認知機能をサポートする可能性があることが示されています。 
    • 適正な体型と除脂肪体重を維持するには、高品質のタンパク質を増やし、脂質とカロリー量を減らすことが有効です。 
    • 魚油に含まれるオメガ 3 脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)と自然由来のグルコサミンは、関節の健康と可動性のサポートに有効です。また、オメガ 3 脂肪酸は、炎症の抑制も助ける可能性があります。 
    • 抗酸化物質(ビタミン Cやビタミン Eなど)とプロバイオティクスは健康な免疫系をサポートし、プロバイオティクスとプレバイオティクス繊維は健康な消化を促進します。 
  • 高齢猫が長く健康で過ごすには、理想的な体型(を保ち、除脂肪体重を維持するように給餌することが重要です。 
会話の手始めの背景画像

「シニア犬は太り過ぎになりやすいため、[犬の名前]ちゃんを理想的な体型に維持することが私たちの目標です。自宅で[犬の名前]ちゃんの体型を定期的にチェックしましょう。これは簡単にできますよ。[犬の名前]ちゃんの胴のくびれ、腹のたるみをチェックして、肋骨に触れてみるだけです。カロリーと脂質を抑え、タンパク質と抗酸化物質を増量したシニア犬用フードを与えれば、わんちゃんを理想的な体型に維持するのに役立つ可能性がありますよ。」

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その他のリソース

Debraekeleer, J., Gross, K. L., & Zicker, S. C. (2010).Feeding mature adult dogs: Middle aged and older.In M.S.Hand, C. D. Thatcher, R. L. Remillard, P. Roudebush, & B. J. Novotny (Eds.). Small animal clinical nutrition (5th ed., pp. 273─280).Mark Morris Institute. 

Kealy, R. D., Lawler, D. F., Ballam, J. M., Lust, G., Smith, G. K., Biery, D. N., & Olsson, S. E. (1997).Five-year longitudinal study on limited food consumption and development of osteoarthritis in coxofemoral joints of dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 210(2), 222─225. 

Kealy, R. D., Lawler, D. F., Ballam, J. M., Mantz, S. L., Biery, D. N., Greeley, E. H., Lust, G., Segre, M., Smith, G. K., & Stowe, H. D. (2002).Effects of diet restriction on life span and age-related changes in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 220(9), 1315─1320. doi: 10.2460/javma.2002.220.1315 

Laflamme, D. P., Martineau, B., & Jones, W. (2000).Effect of age on maintenance energy requirements and apparent digestibility of canine diets. Compendium of Continuing Education for the Practicing Veterinarian, 22(Suppl 9A), 113. 

Pan, Y., Larson, B., Araujo, J. A., Lau, W., de Rivera, C., Santana, R., Gore, A., & Milgram, N. W. (2010).Dietary supplementation with medium-chain TAG has long-lasting cognition-enhancing effects in aged dogs. British Journal of Nutrition, 103(12), 1746─1754. doi: 10.1017/S0007114510000097 

Pan, Y., Kennedy, A. D., Jönsson, T. J., & Milgram, N. W. (2018).Cognitive enhancement in old dogs from dietary supplementation with a nutrient blend containing arginine, antioxidants, B vitamins and fish oil. British Journal of Nutrition, 119(3), 349─358. doi: 10.1017/S0007114517003464 

Smith, G. K., Paster, E. R., Powers, M. Y., Lawler, D. F., Biery, D. N., Shofer, F. S., McKelvie, P. J., & Kealy, R. D. (2006).Lifelong diet restriction and radiographic evidence of osteoarthritis of the hip joint in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 229(5), 690─693. doi: 10.2460/javma.229.5.690