モリーの診察:肥満だが健康な大型犬種の成犬

演習シナリオ

モリーの診察

6 歳、避妊手術済みのメスのラブラドールレトリバー

  • モリーは、定期健診とワクチン接種のために受診しています。
  • モリーは、「スコップ 1 杯」の成犬用ドライドックフードを 1 日 2 回食べています。飼い主は、モリーに「手のひら一杯分」のおやつを毎日与え、時には人間の食べ残しも与えています。
  • モリーのボディコンディションスコアは 9 段階の 8、体重は 35 kg、筋肉量は正常です。
  • それ以外の点は健康であり、診察中も快活で敏捷です。

赤い一般的な過体重の犬と猫のアイコン

体型の異常

犬と猫の肥満

世界中で、ペット猫の最大 63 % 、ペット犬の 59.3 % が過体重または肥満であると推測されています。1  この状態は、変形性関節症や猫の糖尿病などの多くの疾患に関連しています。2,3  過体重または肥満のペットは、そうでないペットほど長生きしないことも研究により示されています。4-6  肥満が重大な健康問題を起こすにも関わらず、ペットの飼い主はペットの体重が問題であると認識していないとの調査結果があります。1,7,8  猫や犬の肥満管理では、栄養の役割についてのよりよい理解とコミュニケーション がペットの長生きに結び付きます。9

キーメッセージ


  • ペットの過体重に取り組むための最初の段階は、個々の犬や猫の理想的な体型を認識することです。理想的な体型を決定する方法は、以下の通りです。 
    • 体重測定。ただし、体重は健康な体型の一面にすぎません。体重では体の組成について知ることはできません(脂肪量と除脂肪量)。体重が同じでも、加齢とともに脂肪量は増加し、除脂肪量が減少することがあります。  
    • Purinaの 9 段階のボディコンディションスコア (BCS)システム: 
      • 猫の理想的な BCS は 5 で、犬は 4~5 です。 
      • ペットの BCS が 7 を超えると肥満と見なされます。 
      • 飼い主はペットの状態を過小評価しがちですが、10 研究によれば、飼い主が BCS スコア表を見ると、 BCS を正しく認識できるようになります。11,12 。
    • 4 段階のマッスルコンディションスコア(MCS)システムで筋肉量を評価すると、過体重のペットでも起こりうる除脂肪体重の減少を理解するのに役立ちます。
       
  • 食事療法は、理想的な体型の実現と維持のために、体重管理の基礎となるものです。 
    • 目標体重に対する維持エネルギー必要量(MER)を計算して、減量に必要なペットの 1 日のカロリー許容量を算出し、その許容量を 25~40 % 減らします。 
    • カロリー制限は、猫では 1 週間に体重の 0.5~1 %、犬では 1~2 %の緩やかな体重減少を目指します。13 MER には個体差があり、平均値の 50 % も異なることがあり、望ましい体重減少率を達成するためには、摂取量を調整する必要がある場合があります。急速な体重減少は理想体重に達した後にリバウンドする可能性があります。 
       
  • 1 日のカロリー許容量に基づき詳細な減量計画を作成します14 
    • 飼い主が与えるべき食事を正確に把握します。 
      • カロリーに対する必須栄養素の比率を高め、必須栄養素の摂取を維持しながらカロリーを制限する食事を与えます。 
      • 主要な栄養素はタンパク質と食物繊維です。 
      • 大豆イソフラボンやカルニチンも有効です。 
      • 自家製の食餌を選択される場合は、獣医栄養士にご相談ください。公開されているレシピの多くは、栄養的に適切ではなく、健康上の問題を引き起こす可能性があります。15  
    • 確実に体重管理を成功させるには、フードの計量が有効です。グラムで計量するのが最も正確ですが、計量カップも有用です。 
    • おやつなどを 1 日の総摂取カロリーに加味します。総カロリーの 10 % 未満に制限しましょう。 
    • ペットがカロリー制限されているとき、飼い主は食べ物を求める行動を管理できるようにします。食品に関連しない活動や、食品の知育玩具の使用に関する提案も含めます。 
       
  • 4 週間ごとに体重、BCS、MCS を管理し、必要に応じて摂取カロリーを調整します。14 
    • ペットの体重が減るにつれて MER が変化することがあります。 
    • 目標体型を達成した後も、ペットのエネルギー必要量は減量前より少なくなります。カロリー許容量を 10 % 増やすことから始め、体重を維持するために必要に応じて調節します。 
       
  • 飼い主の信念や行動は、ペットの肥満に対処する時期、あるいは対処するかどうかに影響します。9,16 
    • ペットと飼い主の関係に注意を払います。 
    • 動物用栄養学によりペットの生活の質が向上し、疾患を予防できることを強調します。 
カンバセーション・スターター
会話のきっかけ

「あなたの[猫/愛犬]はボディコンディションスコア(BCS)が [_] です。[猫は 5 / 犬は 4~5]であればより健康的です。[ペットの名前]が理想的なボディコンディションスコア(BCS)を達成するために一緒に取り組みますか?」 

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Purina ボディコンディションシステム

Purina ボディコンディションシステムは、ペットの体組成を評価する簡単で実用的なツールです。

1 ~ 5 分

ボディコンディション評価の実施方法 - 猫

猫のボディコンディションスコアはわずか 3 ステップで評価できます。

1 ~ 5 分

ボディコンディション評価の実施方法 - 犬

犬のボディコンディションスコアはわずか 3 ステップで評価できます。

1 ~ 5 分

栄養評価の構成要素

それぞれの犬や猫に合わせた食餌の推奨案を作成するには、栄養評価を反復プロセスとして行うことが重要です。

1 ~ 5 分

食餌歴を綿密に記録する

患者が何を食べているのかを知る唯一の方法は、質問すること、そして聞き取った情報を医療記録に記録しておくことです。

1 ~ 5 分

減量用の食事を与える

世界の一部の地域では、ペットとして飼育されている猫の最大63%および犬の最大65%が過体重または肥満であり、この状況は深刻な健康上のリスクと関連しています。しかし、多くのットオーナーは自身の犬や猫が過体重であることに気付いておらず、ペットの体重や生活を健康な状態に管理するためにどのような栄養管理をすべきか理解が不足しています。

6 ~ 10 分

ペットの肥満 肥満を予防・管理するための 栄養学的および行動学的戦略

体重超過を予防し、管理することで犬や猫がより良い生活を送り、そして大切なことですが、長く生きることができます。

20 分以上

除脂肪体重とタンパク質

犬猫の健康全般における除脂肪体重(LBM)の重要性、および LBM の減少緩和において高タンパク食が果たす役割について詳しく見てみましょう。

11 ~ 15 分

マッスルコンディションスコアを使用して患者の筋量減少を検出する

マッスルコンディションスコアは、栄養評価の一環として使用できる、触診による除脂肪体重の評価方法です。

1 ~ 5 分

WSAVA 猫用マッスルコンディションスコアチャート

猫の筋肉量の評価に役立つシンプルな視覚ガイドです。

日本語の翻訳版のない英語の記事へのリンクです。

WSAVA 犬用マッスルコンディションスコアチャート

犬の筋肉量の評価に役立つシンプルな視覚ガイドです。

日本語の翻訳版のない英語の記事へのリンクです。

ペットの肥満について飼い主と話す

慎重に扱うべき話題を話し合う場合は、ペットの健康と幸福をしっかりと意識してから始めます。

1 ~ 5 分

飼い主の栄養に関する「変化への準備性」を判断する

変化の段階を把握することにより、適切な時期に適切な解決策がわかるようになります。

1 ~ 5 分

ペットの飼い主と共有するには:

猫のボディコンディションを評価する

猫のボディコンディションはわずか 3 ステップで評価できます。

1 ~ 5 分

犬のボディコンディションを評価する

犬のボディコンディションはわずか 3 ステップで評価できます。

1 ~ 5 分

猫用ボディコンディションシステムシート

猫用 Purina ボディコンディションスコアシステムの視覚教材。

犬用ボディコンディションシステムシート

犬用 Purina ボディコンディションスコアシステムの視覚ツール。

猫のための体調管理システム進捗表

ペットの体重増減を追跡するために、猫のための体調管理システムシートと進捗表を併用する必要があります。

犬のための体調管理システム進捗表

ペットの体重増減を追跡するために、犬のための体調管理システムシートと進捗表を併用する必要があります。

参考文献

  1. Larsen, J. A., & Villaverde, C. (2016). Scope of the problem and perception by owners and veterinarians. The Veterinary Clinics of North America.Small Animal Practice, 46(5), 761–772.  
  2. German, A. J., Ryan, V. H., German, A. C., Wood, I. S., & Trayhurn, P. (2010). Obesity, its associated disorders and the role of inflammatory adipokines in companion animals. Veterinary Journal, 185(1), 4–9.  
  3. Laflamme, D. P. (2012). Obesity in dogs and cats: What is wrong with being fat? Journal of Animal Science, 90, 1653–1662.   
  4. Penell, J. C., Morgan, D. M., Watson, P., Carmichael, S., & Adams, V. J. (2019). Body weight at 10 years of age and change in body composition between 8 and 10 years of age were related to survival in a longitudinal study of 39 Labrador retriever dogs. Acta Veterinaria Scandinavica, 61(1), 42.  
  5. Salt, C., Morris, P. J., Wilson, D., Lund, E. M., & German, A. J. (2019). Association between life span and body condition in neutered client-owned dogs. Journal of Veterinary Internal Medicine, 33(1), 89–99. 
  6. Teng, K. T., McGreevy, P. D., Toribio, J. L., Raubenheimer, D., Kendall, K., & Dhand, N. K. (2018). Strong associations of nine-point body condition scoring with survival and lifespan in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 20(12), 1110–1118. 
  7. Eastland-Jones, R. C., German, A. J., Holden, S. L., Biourge, V., & Pickavance, L. C. (2014). Owner misperception of canine body condition persists despite use of a body condition score chart. Journal of Nutritional Science, 3, e45.  
  8. Singh, R., Laflamme, D. P., & Sidebottom-Nielsen, M.  (2002). Owner perceptions of canine body condition score. Journal of Veterinary Internal Medicine, 16, 362. 
  9. Churchill, J., & Ward, E. (2016). Communicating with pet owners about obesity: Roles of the veterinary health care team. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 46(5), 899–911. doi: 10.1016/j.cvsm.2016.04.010 
  10. German, A. J. (2016). Obesity prevention and weight maintenance after loss. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 46(5), 913–929. doi: 10.1016/j.cvsm.2016.04.011 
  11. Colliard, L., Paragon, B. M., Lemuet, B., Bénet, J. J., & Blanchard, G. (2009). Prevalence and risk factors of obesity in an urban population of healthy cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 11(2), 135–140. 10.1016/j.jfms.2008.07.002  
  12. Peron, L., Rahal, S. C., Castilho, M. S., Melchert, A., Vassalo, F. G., Mesquita, L. R., & Kano, W. T. (2016). Owner's perception for detecting feline body condition based on questionnaire and scores. Topics in Companion Animal Medicine, 31(3), 122–124. doi: 10.1053/j.tcam.2016.08.008 
  13. Laflamme, D. P. (2006). Understanding and managing obesity in dogs and cats. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 36, 1283–1295. 
  14. Shepherd, M. (2021). Canine and feline obesity management. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 51(3), 653–667. doi: 10.1016/j.cvsm.2021.01.005 
  15. Stockman, J., Fascetti, A. J., Kass, P. H., & Larsen, J. A. (2013). Evaluation of recipes of home-prepared maintenance diets for dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association, 242(11), 1500–1505. 10.2460/javma.242.11.1500 
  16. Webb, T. L., du Plessis, H., Christian, H., Raffan, E., Rohlf, V., & White, G. A. (2020). Understanding obesity among companion dogs: New measures of owner's beliefs and behaviour and associations with body condition scores. Preventive Veterinary Medicine, 180, 105029.