消化管(腸)は、食物消化と栄養吸収の中心であるだけでなく、ペットの健康全般および疾患の発生や進行についても主要な役割を果たしています。
加齢による微生物叢の異常(dysbiosis、ディスバイオシスともいう)に伴う腸管バリアの崩壊は、多くの加齢性疾患や慢性疾患と関連があります。1,2
消化管に存在する多数の免疫細胞は、免疫系の大部分を構成しています。腸内微生物は、これらの免疫細胞にアクセスし、身体の免疫応答と炎症応答を起こすための機会を永続的に得ています。3,4
この免疫系との直接のつながりは、宿主の体内で広範な影響を持ち、微生物叢と身体との間の相互作用の多くを仲介していると考えられます。例えば、微生物叢に関連する免疫応答の変化は、炎症性気道疾患と関連性があると考えられています。これは腸と肺の連関を反映したものです。5
腸内微生物叢は宿主である身体と相互作用し、身体全体の代謝に影響を及ぼします。また、微生物叢の異常(ディスバイオシス)は、肥満や 2 型糖尿病などの代謝障害に関連すると考えられています。4,6,7
代謝への微生物叢の影響は、身体の免疫系によって仲介されると考えられるほか、ビタミン類、短鎖脂肪酸、アミノ酸、細菌代謝産物の産生によって仲介される可能性もあります。これらの物質は、宿主全体の代謝に関連する細胞経路に影響を与えるためです。4
個体の腸内微生物叢はアレルギー性疾患やアトピー性疾患から個体を保護していること、および微生物叢の異常はアレルギーの発現を助長することを示す証拠が蓄積されつつあります。8腸内微生物叢が皮膚疾患の発現および増悪において果たす役割は、免疫系の調節とサイトカインの産生によって仲介される可能性があります。3
ヒトにおいては、アレルゲンへの最初の暴露が皮膚を介した場合はアレルゲンへの感作が誘発され、経口摂取を介した場合はアレルゲンへの耐性が誘発されることになります。3インターロイキン(IL)-9、IL-13、IL-25、IL-33 など、多くのサイトカインは、腸と皮膚の連関において、また食物アレルギーに伴う皮膚性併存症の発現において主要な役割を担っています。3
腸内微生物叢は、免疫、神経内分泌、神経(腸管神経系と迷走神経経由)の経路を通じて脳の発達と機能を制御します。これは一般的に、微生物叢・腸・脳連関(microbiota-gut-brain axis)、またはより簡単に、腸脳連関と呼ばれます。1,6腸脳連関は、認知機能においてきわめて重要な役割を果たしています。そのため、腸内微生物叢の構成異常は、神経炎症と相関するほか、不安障害、認知障害、認知症などの多数の病状を引き越す可能性があります。1