

成猫
妊娠・授乳期の母猫と子猫の栄養
母猫が妊娠、出産、子猫の離乳をうまく乗り切るには、最適な栄養が必要です。母猫が痩せすぎや太りすぎだと、妊娠の難易度が上がり、子猫のサイズが小さくなり、難産のリスクが上がったり、十分な量の母乳が出ないなどの問題が生じ、子猫の健康や成長に悪影響を及ぼします。
交配予定の猫が発情期に必要とする栄養要求は維持期の成猫と同じです。しかし、妊娠・授乳期には、平常時とは異なる特別な栄養設計も必要です。
キーメッセージ
母猫
- 適切な受胎、子猫の適正な出生体重、や死亡率の低下には、雌猫が交尾前に理想的な体型である必要があります。(ボディコンディションスコア[BCS]でいう9段階のうち5程度)
- 交配を考えている場合は、交配時または交配前に、高品質で消化性に優れた総合栄養食の中でも、成長期あるいは妊娠・授乳期向けに栄養を調整したフードに切り替える必要があります。(子猫用や全ライフステージ対応も可)
- 交配前にフードを切り替えると、次のようなメリットが得られます。
- 卵子の受精(受胎)および子宮内膜への受精卵の着床というきわめて重要な期間において、消化不良や摂食量の減少を防ぐ
- 不足すると受胎率や妊娠初期の胎児の生存率に悪影響を及ぼすリスクのあるストック用の栄養状態を改善する
- エネルギー摂取量を増やす
- フードを切り替える際には、フード変更に伴う消化不良を避けるために 7 日かけて新しいフードを少しずつ導入するようにします。
- フード切替時の初期段階では、カロリーの過剰摂取を招かないように、給与量をこまめに管理する必要があります。
- 63~65 日の妊娠期間中、健康な母猫は通常、徐々に体重が増えていきます。これは、犬とは異なる点です。
- 妊娠期間中は摂食量が若干増減することがあります。これは、妊娠に関連するホルモンの変化によるものです。しかし、子猫を出産するまでに、母猫は維持期よりも 25~50% ほどカロリーを多く消費します。
- 成長と繁殖に適した高品質な総合栄養食は、必要な栄養素をすべて含有しているため、サプリメントなどの補助食は必要ありません。
- 妊娠期が最後の 1/3(第 3 期)に到達したら、1日の食事量を複数回に分けて給与するか、母猫が自由に食べられる自由採食に変更します。こうすることで、胎児の成長に伴い、腹部の空間が圧迫されたとしても、母猫は十分に栄養を摂取することができます。
- 授乳期は、ライフステージの中で栄養が最も必要な時期です。カロリー(エネルギー)も栄養条件も、成長期に比べて高くなります。
- 授乳期の猫は、出産後 3~4 週間でピークを迎える母乳の産生要求量に対応するために、消化が良く、高エネルギー・高栄養のフード(子猫用または全ライフステージ対応用)が必要です。
- また、授乳する母猫は、母乳をつくるために十分な水分を摂取する必要があります。そのため、新鮮で清潔な水を常に摂取できるように用意することが重要です。また、水分摂取量を増やすには、ウェットフードを与えることも有効です。
- 出産後 3~4 週間は、1 日に複数回に分けて給餌するか、母猫が自由に食べられる自由採食にすると、授乳期のエネルギー要求量を満たすのに役立ちます。
- 授乳中は、カロリー摂取量を増やしても母猫の体重は減少し続けます。離乳すると、交配前の体重に戻っていきます。
- 子猫が半固形食や固形食を食べ始めると、産乳量は減少し始めます。
- 子猫が生後およそ 5~8 週間になると、母猫は自然に離乳を開始します。
- 離乳の 1~2 日前および離乳中に母猫の食事量を制限すると、産乳量を減らすのに役立ちます。
- 離乳前日に、母猫と子猫を隔離します。産乳量をゆっくりと減らすために、母猫には新鮮な水のみを引き続き与え、一切の食事を停止します。その晩に母猫と子猫をもう一度一緒にして、授乳させます。
- 離乳当日は、母猫と子猫を 1 日中隔離します。
- 離乳当日には、交配前に与えていたフードの約 25% 量を母猫に給与します。その後 3 日間、母猫への給与量が交配前の食事量の 100% に達するまで、徐々に与えるフードの量を増やしていきます。
交配前、発情期および交尾期の雌猫の食事管理で考慮すべきこと
- 適切な受胎、子猫の適正な出生体重、や死亡率の低下には、雌猫が交尾前に理想的な体型である必要があります。(ボディコンディションスコア[BCS]でいう9段階のうち5程度)
- 交配を考えている場合は、交配時または交配前に、高品質で消化性に優れた総合栄養食の中でも、成長期あるいは妊娠・授乳期向けに栄養を調整したフードに切り替える必要があります。(子猫用や全ライフステージ対応も可)
- 交配前にフードを切り替えると、次のようなメリットが得られます。
- 卵子の受精(受胎)および子宮内膜への受精卵の着床というきわめて重要な期間において、消化不良や摂食量の減少を防ぐ
- 不足すると受胎率や妊娠初期の胎児の生存率に悪影響を及ぼすリスクのあるストック用の栄養状態を改善する
- エネルギー摂取量を増やす
- フードを切り替える際には、フード変更に伴う消化不良を避けるために 7 日かけて新しいフードを少しずつ導入するようにします。
- フード切替時の初期段階では、カロリーの過剰摂取を招かないように、給与量をこまめに管理する必要があります。
妊娠中の母猫へのフードの与え方
- 63~65 日の妊娠期間中、健康な母猫は通常、徐々に体重が増えていきます。これは、犬とは異なる点です。
- 妊娠期間中は摂食量が若干増減することがあります。これは、妊娠に関連するホルモンの変化によるものです。しかし、子猫を出産するまでに、母猫は維持期よりも 25~50% ほどカロリーを多く消費します。
- 成長と繁殖に適した高品質な総合栄養食は、必要な栄養素をすべて含有しているため、サプリメントなどの補助食は必要ありません。
- 妊娠期が最後の 1/3(第 3 期)に到達したら、1日の食事量を複数回に分けて給与するか、母猫が自由に食べられる自由採食に変更します。こうすることで、胎児の成長に伴い、腹部の空間が圧迫されたとしても、母猫は十分に栄養を摂取することができます。
授乳中の母猫へのフードの与え方
- 授乳期は、ライフステージの中で栄養が最も必要な時期です。カロリー(エネルギー)も栄養条件も、成長期に比べて高くなります。
- 授乳期の猫は、出産後 3~4 週間でピークを迎える母乳の産生要求量に対応するために、消化が良く、高エネルギー・高栄養のフード(子猫用または全ライフステージ対応用)が必要です。
- また、授乳する母猫は、母乳をつくるために十分な水分を摂取する必要があります。そのため、新鮮で清潔な水を常に摂取できるように用意することが重要です。また、水分摂取量を増やすには、ウェットフードを与えることも有効です。
- 出産後 3~4 週間は、1 日に複数回に分けて給餌するか、母猫が自由に食べられる自由採食にすると、授乳期のエネルギー要求量を満たすのに役立ちます。
- 授乳中は、カロリー摂取量を増やしても母猫の体重は減少し続けます。離乳すると、交配前の体重に戻っていきます。
- 子猫が半固形食や固形食を食べ始めると、産乳量は減少し始めます。
離乳時および離乳後の母猫へのフードの与え方
- 子猫が生後およそ 5~8 週間になると、母猫は自然に離乳を開始します。
- 離乳の 1~2 日前および離乳中に母猫の食事量を制限すると、産乳量を減らすのに役立ちます。
- 離乳前日に、母猫と子猫を隔離します。産乳量をゆっくりと減らすために、母猫には新鮮な水のみを引き続き与え、一切の食事を停止します。その晩に母猫と子猫をもう一度一緒にして、授乳させます。
- 離乳当日は、母猫と子猫を 1 日中隔離します。
- 離乳当日には、交配前に与えていたフードの約 25% 量を母猫に給与します。その後 3 日間、母猫への給与量が交配前の食事量の 100% に達するまで、徐々に与えるフードの量を増やしていきます。
子猫
- 分娩直後および 6~8 時間以内に、子猫に授乳させる必要があります。これは授乳初期につくられる「初乳」に含まれる移行抗体(母親からもらう免疫)を確実に摂取させるためです。
- 母猫の母乳は子猫にとっての完全栄養食であり、最初の数週間で子猫が急速に成長するために必要なすべての栄養素を与えることができます。
- 生後およそ 3 週間で子猫は半固形食(ドライフードとぬるま湯を1:2の割合で混ぜたかゆ状の食事)を開始できます。このときに使用するフードは、母猫が食べているのと同じものを使用します。
- 子猫が半固形食を食べることは、自然かつ段階的なプロセスです。授乳段階の一部であり、離乳の過程の始まりです。
- 生後 5~6 週間が経過したところで、かゆ状のフード:水の割合を2:1に変えることができます。
- 一般的に、子猫が生後 6~9 週に達した段階で離乳が完了します。
子猫の授乳と離乳
- 分娩直後および 6~8 時間以内に、子猫に授乳させる必要があります。これは授乳初期につくられる「初乳」に含まれる移行抗体(母親からもらう免疫)を確実に摂取させるためです。
- 母猫の母乳は子猫にとっての完全栄養食であり、最初の数週間で子猫が急速に成長するために必要なすべての栄養素を与えることができます。
- 生後およそ 3 週間で子猫は半固形食(ドライフードとぬるま湯を1:2の割合で混ぜたかゆ状の食事)を開始できます。このときに使用するフードは、母猫が食べているのと同じものを使用します。
- 子猫が半固形食を食べることは、自然かつ段階的なプロセスです。授乳段階の一部であり、離乳の過程の始まりです。
- 生後 5~6 週間が経過したところで、かゆ状のフード:水の割合を2:1に変えることができます。
- 一般的に、子猫が生後 6~9 週に達した段階で離乳が完了します。


補足情報
Case, L. P., Daristotle, L., Hayek, M. G., & Raasch, M. F. (2011).Canine and feline nutrition: A resource for companion animal professionals (3rd ed.).Mosby Elsevier.
Gross, K. L., Becvarova, I., & Debraekeleer, J. (2010). Feeding reproducing cats. In M. S. Hand, C. D. Thatcher, R. L. Remillard, P. Roudebush, & B. J. Novotny (Eds.), Small animal clinical nutrition (5th ed., pp. 401─413). Mark Morris Institute.
Gross, K. L., Becvarova, I., & Debraekeleer, J. (2010). Feeding nursing and orphaned kittens from birth to weaning. In M. S. Hand, C. D. Thatcher, R. L. Remillard, P. Roudebush, & B. J. Novotny (Eds.), Small animal clinical nutrition (5th ed., pp. 415─427). Mark Morris Institute.
Loveridge, G. G. (1985). Body weight changes and energy intake of cats during gestation and lactation. Animal Technology: Journal of the Institute of Animal Technicians, 37(1), 7─15.
Wichert, B., Schade, L., Gebert, S., Bucher, B., Zottmaier, B., Wenk, C., & Wanner, M. (2009). Energy and protein needs of cats for maintenance, gestation and lactation. Journal of Feline Medicine and Surgery, 11(10), 808─815. doi: 10.1016/j.jfms.2009.02.006