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治療のための栄養

栄養の影響を受けやすい健康状態の犬・猫のニーズに関する有用な情報。

脳と認知機能の障害

犬のてんかん

てんかんは、世界中で犬の 5 %が罹患する脳の慢性疾患です。脳内の「電気的ストーム」(神経細胞の電気的活動が異常に過同調すること)によって引き起こされる発作を特徴とします。特発性てんかんは、最も一般的なてんかんの種類です。発作に加えて、てんかんを持つ犬は、記憶障害や注意欠陥、多動性障害(ADHD)様の行動(追いかけや恐怖心の増加)を含む認知機能障害を示すことがあります。抗てんかん薬は、単独または組み合わせて、発作を抑えたり取り除いたりするために使用されます。しかし、最大で 3 分の 1 の犬が治療抵抗性(発作の活動性の減少が 50 %未満の状態と定義される)です。中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を含む食餌を与えることは、難治性特発性てんかんの犬において、投薬治療の補助として有用となる場合があります。

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知っていましたか?

脳のエネルギー需要の 60~70 % はケトン体によって供給することができます。

キーメッセージ


  • 健康な脳はブドウ糖を主なエネルギー源としていますが、てんかんを持つ犬の脳はブドウ糖の代謝が妨害され、脳のエネルギー枯渇を招きます。
  • 中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、脳に代替エネルギー源(ケトン体と中鎖脂肪酸の両方)を供給することができます。 
  • また、MCT 由来の中鎖脂肪酸には、直接的な抗けいれん作用があります。
  • Purina が実施した 2 つの研究では、難治性特発性てんかん(少なくとも 1 種類の抗けいれん薬で治療中)の犬に MCT を添加した食事を与えたところ、発作の回数や 1 ヵ月に発作が起きた日数が有意に減少したという結果が示されました。
    • 3 分の 2 を超える犬が改善しました。
    • 早い場合は、第 1 日目から改善が見られました。
    • 抗けいれん薬の血清濃度には、有意な影響はありませんでした。
  • また、Purina の研究では、MCT 食を与えることで、ADHD 様の行動、例えば、追いかけや他人への恐怖心が著しく減少することが示されました。
カンバセーション・スターター

「抗けいれん薬の投与に加え、栄養改善を行うことで、愛犬の特発性てんかんをよりよく管理できる可能性があります。中鎖脂肪酸トリグリセリドを補った食事を与えることで、犬の脳に代替エネルギー源を提供し、発作の抑制に役立つ可能性があります」

追加のリソース

Law, T. H., Davies, E. S., Pan, Y., Zanghi, B., Want, E., & Volk, H. A. (2015). A randomised trial of a medium-chain TAG diet as treatment for dogs with idiopathic epilepsy. The British Journal of Nutrition114(9), 1438–1447. doi: 10.1017/S000711451500313X

Packer, R. M., Law, T. H., Davies, E., Zanghi, B., Pan, Y., & Volk, H. A. (2016). Effects of a ketogenic diet on ADHD-like behavior in dogs with idiopathic epilepsy. Epilepsy & Behavior: E&B55, 62–68. doi: 10.1016/j.yebeh.2015.11.014

Molina, J., Jean-Philippe, C., Conboy, L., Añor, S., de la Fuente, C., Wrzosek, M. A., Spycher, A., Luchsinger, E., Wenger-Riggenbach, B., Montoliu, P., Gandini, G., Menchetti, M., Ribeiro, J. C., Varejão, A., Ferreira, A., Zanghi, B., & Volk, H. A. (2020). Efficacy of medium chain triglyceride oil dietary supplementation in reducing seizure frequency in dogs with idiopathic epilepsy without cluster seizures: A non-blinded, prospective clinical trial. The Veterinary Record187(9), 356. doi: 10.1136/vr.105410

Packer, R. M. A., McGreevy, P. D., Pergande, A., & Volk, H. A. (2018). Negative effects of epilepsy and antiepileptic drugs on the trainability of dogs with naturally occurring idiopathic epilepsy. Applied Animal Behaviour Science, 200, 106–113. doi: 10.1016/j.applanim.2017.11.008